さあ、お待ちかねの“ひどい宿”です。
今回の「オリエントホテル」、ここもすごい!まず廃ビルのような外観と看板にへこみます。ホテル前に立ったとき、予約したことを後悔しはじめます。フロントが薄暗く、エレベーターに乗ろうと思って廊下に出ると、これまた暗い。突き当たりに、なにやら電球の切れかけた小さな看板が見えたので、恐る恐る近寄ってみると、「地下大浴場」という文字が不気味に浮かび上がり、全身の血が音を立てて引きました。
エレベーターを降りると、上の階の廊下もまた暗い。急いで客室に入ると、思わず息を呑みました。「なんだ、ここは?」誇張ではありません。本当に口からこの言葉が漏れてきました。暗いのは予想してましたが、この陰気くさい沈んだ色のクロスはなんなのでしょう。壁ににじんだ、泣き叫ぶ人間の顔にしか見えない奇怪なシミはどうしてできたのでしょう。カーペットの中央に見える黒ずんだシミも、なにやら血だまりの痕に見えてきました。窓の近くから伸びて壁を這っているぶっとい配管(しかもミイラのように汚い布が巻きつけてある)はなにかのユーモアなのかもしれません。
気を取り直して風呂にでも入ろうと、一歩浴室に入ったとたん、すさまじい異臭が鼻をつきました。床が!床が変色している!いったいなんの汚れだ?なんの臭いなんだ?さしもの私も、入浴をあきらめて寝ることにしましたが、まるでホラー映画の撮影現場のような雰囲気に圧倒され、ウイスキーで前後不覚に酔いつぶれるまでとても明かりを消す気になれませんでした。(もやしもん)