さて、というわけで(どういうわけだ)、「いい宿なんだけどなあ。ちょっと惜しいなあ」というお宿を紹介する個人的企画の第2弾。
積丹半島の南側に位置する泊村の盃温泉郷に、ずどーんとそびえ立つ「泊村国民宿舎もいわ荘」です。温泉郷とはいいながら、はっきり言ってほかの宿は目にも入らない。まず外観とスケールが全然違います。切り立った崖というか巨岩を背に、「なぜこんなところにこんな建物が?」といぶかしみたくなる立派な宿で、すべての客室から弁天岩(目の前の海にじゃまくさく鎮座ましましている)が見えるように配慮したユニークなギザギザ構造も楽しい。
客室は、モダンな見かけによらず和室中心ですが、洋室とともに広くて清潔で快適。食事も、なにせ津波が来たら直撃間違いなしってほど日本海に近いわけで、海のものが新鮮でうまい。何の変哲もないホッケの開きでさえ、近所の漁師さんの手づくりではないかと思われるほどうまい。ちなみに、盃地区はウニがうまい浜でもありまして、痛風持ちでなくて予算さえ許せばウニ三昧もこたえられません。風呂はもちろん天然温泉で、大浴場が珍しい2階建て構造になってます。つまり裸で1階の浴場から2階の浴場へと自由に移動できるわけで、子供にもウケそうな楽しさ。ミニマムながら露天風呂もあり、ついつい長風呂してしまう宿です。──で、なにが「惜しい」のかというと、フロントの応対が悪い。以前、仕事でここに泊まろうとして、昼ごろに電話したところ、横柄な感じのおっさんが応対に出ました。「○日に1泊したいんですが」と言うと、「何人でお泊まりですかあ?」となめた口調で訊いてくる。「1人です」と答えると、妙な間があってから、「あー、あいにくその日はお部屋いっぱいですねえー。申し訳ありませんねえー」と、たちまち誠意ナッシングのお答え。いっぱいだあ?シーズンオフのド平日にぃ?人を疑うことを知らない純朴な私は、電話を切ったあと、「フロント従業員の交替パターンは多忙な時間帯、つまりチェックインが集中する夕方を挟んで遅番、早番と分かれているに違いない」と考え、宿泊客のチェックインが一段落する8時ごろまで待ってから電話を掛けなおしました(どこが純朴だ)。すると案の定、遅番と思われるまったく別の女性スタッフが応対に。「○日に1泊したいんですが」と同じように切り出すと、1秒とおかずに「はい、ご用意できます」との答え。「え?予約でいっぱいじゃあないんですか?」と白々しく訊いてみると、きょとんとした声で「は?いいえ?この日はほとんどのお部屋が空いておりますが」。後日、この地区の事情に詳しい知り合いにこの話をすると、「あー、相変わらずそんなことやってるんだ、あそこ。国民宿舎だからお役所体質のおっさんがいるんだよね。1人で宿泊しようとする客を、勝手にウソこいて断わったりするんだよね」。………いい宿だけど惜しい、というシリーズ
なんですが、考えてみると惜しいどころの騒ぎじゃなくて、サービス業失格の宿かも(2回目にして早くも企画倒れの予感)。