さて、今回は特別企画で“対照的な惜しい宿”を2軒取り上げます。
1軒目は網走市の「ホテル美園」。いやあ老朽化してますねえ。どこを見ても古くてぼろい。フロントはほとんど物置きというか、奥の部屋にガラクタが適当に積まれているのが丸見えです。風情がありますなあ(どこがだ)。すぐ脇が暗めの食堂。フロントに人がいることはあまりなく、「すみませーん!誰かいませんかあー!」と大声で呼ぶと、食堂の奥の台所からおかみさんが走り出てきます。時間帯によっては、食堂でむしゃむしゃ食事をしていることもあります。さあ、部屋に上がりましょう。ううむ、なんという
狭くて天井の低いエレベーターでしょう。閉所恐怖症の人が乗ったら即死してしまいそうです。金属製のカンオケに入れられて焼き場に運ばれていくようなゴージャスな気分がこみ上げてきます。部屋に入ると、予想にたがわずカーペットに無数のシミが。ホテルの歴史を感じますね。浴室に入ると、四方八方に黒カビが点々と生えています。カビといえども命あるもの。むやみに殺したりしないおかみの優しさがひしひしと感じられます。
……さて、今回はいつもと逆にマイナス要素から始めましたが、いったいどこに惜しいと言わせるだけの長所があるのか、おわかりでしょうか?それ
は、第一に宿泊料の安さ。駅の目の前でサウナや無線LAN完備でシングル4,200円ですから、汚かろうと狭かろうとカビていようとOK!第二に、おかみさんのキャラクターがなかなかよろしい。明るくて元気で気さくで親切、面倒見もよさそうです。安くて応対がよければ、宿は七難隠してしまうんですよ。
──で、2軒目は道南・八雲町の「ビジネスホテルフレスコ本館」。内部もわりと清潔で古さを感じさせず、宿泊料もシングル5,000円と手ごろ。客室もそこそこきれいで、狭苦しくもありません。ビジネスホテルとしては合格ラインだといえましょう。ではなにが惜しいのか。
そう、またもやネックは「人」。フロントの女性の応対のまずさにあります。なんというか、アマチュア丸出しというか、「私はバイトです難しいことは一切質問しないでください、ほっといてください、カギ渡したらとっとと部屋にすっこんで二度と出てこないでください」とゆー感じなのですね。有線LANでインターネットができるというので、自前のパソコンにケーブルをつないでみても、さっぱり開けない。仕方なくフロントに行って訊くと、あたふたと小パニック状態に陥ります。おびえた目を見張り、おどおどと落ち着かなくなり、隣りにいる相方のねーちゃんとヒソヒソ相談した
挙句に「わかりません」てな具合です。結局、らちがあかないので自力で何とかしようと頑張り続け、いいかげん諦めムードになったときに、ふとホテルの説明書を見ると、「インターネット接続のためのLANカードをお貸ししております。フロントまでお申し付けください」と書いてあるではありませんか!頭に来てフロントに駆け下りていくと、すでにバイトねーちゃんは帰ってしまっていて、替わりにむっさい顔をしたおっさんが電話番していました。LANカードのことなど一言も教えてくれなかったと苦情を言うと、「へえー。そうですか」と他人事モードのお気楽な返答。謝りもせずに奥からLANカードを持ってくると、「保証金、いただきますからね」とすましたツラでぬかし、2,000円を預けるはめになりました。今までホテルにもずいぶん泊まりましたが、これほど職業意識のかけらもない無能で無礼な人材ばかりをかき集めるのは並大抵のことではなかったでしょう。「いかにお客様を不快にさせて帰すか。そのための苦労は惜しまない」というオーナーのいなせな心意気がうかがえるホテルでした。(もやしもん)