10月といえば番組改変期。というわけで宿の「食」に焦点を当てた新シリーズを始めてみます(意味不明)。
第1回目は、札幌の都心部で今年7月に新しくオープンした「クロスホテル札幌」。ここはもう、みつけにくい正面玄関からエントランス、エスカレーター、フロント、ラウンジ、レストラン、客室、大浴場と、すべてにおいてスタイリッシュでラグジュアリーかつシンプルでスマート、プログレッシヴ、アーバン、センシティヴ、シック、ファンクショナル、ええっと横文字であと使える言葉は……という具合に(どういう具合だ)徹底したデザイナーズホテルです。
今回のテーマは「食」なので、奮発してホテル内にあるレストラン・アゴーラへと行ってみました(といってもランチですが)。ううむ、やはりお洒落ですな。全体を統一する色合いといい照明器具といい家具といい、隙がありませんっ。幼稚な表現をお許し願えれば、「ドラマや映画に出てきそうな」雰囲気に圧倒されます。客層も、いかにも
といった感じのドレスアップした若い女性グループや、「ぼくの好物はふぉあぐらです」なんて言いそうな血糖値の高そうなお子様を連れたリッチファミリーばかり。壁際で落ち着いて食事がしたかったのですが、なぜか店内中央の思いきり落ち着かない席に案内され、きっと壁側の席はすべて予約が入っているのだな、と思って黙って席につきました。
さあラグジュアリーでスタイリッシュで(中略)な食事の始まりです。ガラスのパレットのような皿が運ばれてきました。おお!なんて美しい食器なのでしょう!でも、表面になにか野菜のクズのようなものがこびりついています。きっと間違って他のお客の食べ残しを持ってきてしまっ……ええっ、これが?これが前菜なんですか?ううむ、さすがセンシティヴでアーバンで(中略)なお店です。量はひたすら少なく上品に。フォークで野菜をかき集め、一口で飲み込みます。少なすぎて味がわからないのは、きっと私の修行が足りないのでしょう。次の皿……ううむ遅い!家族と行ったのですが、会話のネタが続きません。ああやっと来た。十数秒で飲み込みます。次の皿……あああ遅い!なんだか疲れて腹が立ってきました。そういえば、どうも落ち着かないと思ったら、天井から聞こえてくる音楽のボリュームが高すぎるんですな。料理のボリュームもこれくらいだったらいいのに。それに、やたらにたくさんいるお洒落な服装の従業員が、厨房のほうから出入りする様子がどうにも目障り。なぜなのかと観察してみると、あまりにスタイリッシュな構造のため、厨房の出入口が狭くて動きに無駄が多くなり、一種の渋滞を引き起こしてるんですよ、これ
が。さて、ようやく私のメイン料理が来ました。味はいいと思います。いい食材を使って丁寧に作っている感じが伝わってきます。ただ、やはりボリュームというか満足感が今ひとつではあります。……あれ?私がメインを食べ終えても、家族の分のメイン料理が来ません。いくらなんでも遅すぎやしませんか。空腹で家族の顔が険しく
なってきたじゃないですか。そのとき、イケメンの従業員が足取りも軽やかにやってきて、「お待たせしてすみませぇん。これはサービスでっす」と言って小さな生ハム料理を置いていきました。こんなものを作っている暇があったらさっさとメインを持ってこんかい!ようやくデザート。昼飯なのに、軽く2時間かかりました。ん?このデザートの食材は何なのだろう?運んできた女性スタッフに聞いてみると、
「しょ、少々お待ちください!」と大慌てで厨房に戻っていきました。自分たちが客に出しているメニューを把握していないのですね。さすがスタイリッシュでプログレッシヴかつ……(しつこい)。あれ?気がついてみると、壁際の落ち着いた席に
は、結局だれも来ませんでした。ではなぜこんなど真ん中の席に座らせたのでしょう。いやがらせでしょうか。しかも追い打ちをかけるように、近くの壁際の席に料理を運んできた従業員が、私たちの席のすぐそばに食器をセッティングし始め、体を動かすと肘がぶつかり、非常に不愉快だぞこら。ああ、いやいや。これが都会派レストランのやり方なのだ、私たち田舎者が慣れていないだけなんだ、きっとこんな席に座らせられたのは何か私たちに落ち度があったのだ、申し訳ない申し訳ない。……というわけで、いたらない私たち家族のために、不必要に大勢いらっしゃった従業員の方々にランチコースごときで2時間半も働かせ、大変なご迷惑をおかけいたしました。この場を借りましてお詫び申し上げます。(もやしもん)